第1回では、最適な電源ICを選択するための3つのステップのうち、"Step 1 - 候補となる電源ICの選定"を、第2回では、“Step 2 - 実装面積の確認”を説明しました。
[電源ICを選択するための3つのステップ]
・Step 1 - 候補となる電源ICの選定
・Step 2 - 実装面積の確認
・Step 3 - 熱設計の確認
Step 2が終わったところで、候補になっている電源ICに対して、必要なコストと実装面積が明らかになり、ある程度、最適な電源ICへの絞り込みができ、本命の電源ICも見えてきます。
以前は、ここまでのステップで、最適な電源ICを決めてしまっても、問題は起こらなかったのですが、最近は、マイコン/プロセッサの消費電力が大きくなり、その一方で、それを小さな筐体に入れないといけない場合が増えており、自身の発熱に対して、より注意が必要になってきています。
一時期、スマートフォンは、使用中、よく熱くなっていました。最近はそれほどでもなくなってきていますが、これは、消費電力を減らしたり、排熱のコントロールをうまく行ったり、様々な努力の結果、今の状態に収まっています。
ゲーミングパソコンなどでは、これらでも足りないので、水冷のシステムを入れて、強制的にプロセッサを冷却したりしています。
このように、発熱の管理は、最近のシステムでは重要な課題になっています。
電源ICに話を戻しますと、システムの中で電源ICは、大きな発熱源のひとつです。したがい、電源ICの熱の管理を失敗すると、今から設計するシステムの熱の管理もうまくいきません。これを解決するために、「熱設計」を事前に行う必要があります。
熱設計とは、「対象のシステム上で発生する熱を適切に管理し、そのシステムの性能や信頼性を確保すること」です。
Step 3では、Step 2で作成したボードレイアウトを元にして、この熱設計の部分を確認していきます。
Step 3 – 熱設計の確認
Step 3-1: BOMの熱抵抗パラメータを入手
Tj [°C] : ジャンクション温度 (Junction temperature)
RθJA [°C/W] : 熱抵抗 (Thermal resistance) - Junction to Ambient
RθJC [°C/W] : 熱抵抗 (Thermal resistance) - Junction to Case
などのパラメータ値を入手
図1 PCB基板サイズによる熱抵抗の変化 (Smarter World Blog / The Accidental Thermal Engineer: Do Thermal Resistances Add Up?: Part 1 より抜粋)
Step 3-2: BOMの各部品の消費電力を算出
Step 3-3: 熱設計の成立性の机上確認
図2 熱抵抗 のイメージ(Smarter World Blog / The Accidental Thermal Engineer: Do Thermal Resistances Add Up?: Part 1 より抜粋)
Step 3-4: BOM部品の熱シミュレーションモデルを入手
Step 3-5: 基板構成とレイアウトを元に、熱シミュレーションの実施
図3 熱シミュレーション結果(Smarter World Blog / The Accidental Thermal Engineer: Do Thermal Resistances Add Up?: Part 2より抜粋)
この時点で、使用予定のボード上での、電源IC周辺の熱設計の成立性が確認できますので、本命の電源ICが、コスト、実装面積、熱設計の面から問題のないことが確認できます。
ここまで、3回にわたって、最適な電源ICを選ぶための、3つのステップを説明しました。
Step 1 - 候補となる電源ICの選定
Step 2 - 実装面積の確認
Step 3 - 熱設計の確認
この手順を参考にして、最適な電源ICを選んで、システム設計を問題なく行ってください。
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