今回は、ボルテージ・トラッカについて説明します。
ボルテージ・トラッカは、あまり聞かない言葉だと思います。
ボルテージ(Voltage)=電圧、トラッカ(Tracker)=追従するもの、なので、そのままの意味をとると、「電圧を追従するもの」、となります。
実は、ボルテージ・トラッカは、図1のように、入力電圧と、ほぼ同じ電圧を出す装置です。入力電圧が変化すると、それに合わせて、出力電圧も変化します。この動きから、「入力電圧に合わせて(追従して)、電圧を出力するもの」、ということで、ボルテージ・トラッカと呼ばれています。
図1 ボルテージ・トラッカの振る舞い
では、ボルテージ・トラッカは、どのような場面で使われるのでしょう?
1つ目は、レギュレータの出力電流が足りないときに、不足分を追加するための電源として使われます。
例えば、100mA出力可能なリニア・レギュレータがあったとします。ところが、回路を動かすために150mA必要になったとします。この場合、追加の50mA分を、ボルテージ・トラッカから持ってきます(図2参照)。
図2 ボルテージ・トラッカを追加した場合
これをみて、ボルテージ・トラッカでなく、リニア・レギュレータを追加すればいいと思うかもしれません。それは、ある意味正解ですが、問題もあります。
例えば、図3のように、もとの100mA リニア・レギュレータの出力電圧が変動した場合でも、追加したリニア・レギュレータ出力電圧は変化しません。この状態では、回路に入ってくる電圧に差が出るので、回路が誤動作する可能性があります。一方、ボルテージ・トラッカの場合は、この差がないので、あたかも一つのレギュレータから出力が出ているような動作になります。
図3 リニア・レギュレータを追加した場合
2つ目は、図4のように、AD(Analog to Digital)コンバータで、レシオメトリック測定を行うときに、リファレンス電源に対する、追加電源として使われます。レシオメトリック測定では、リファレンス電圧とセンサー電源で、同じ電圧を使う必要があるので、ボルテージ・トラッカが、よく使われます。
図4 レシオメトリック測定イメージ
電源の説明からは、少しはずれますが、レシオメトリック測定については、次回に、番外編として説明しますね。
最後にボルテージ・トラッカと、仕組みのよく似たリニア・レギュレータとの違いを、表で示します。
項目 |
リニア・レギュレータ |
ボルテージ・トラッカ |
入力と出力の関係 |
入力電流と出力電流が、ほぼ同じ。 入力電圧>出力電圧。 |
入力電圧と出力電圧が、ほぼ同じ。 |
ノイズ |
低い。 |
低い。 |
必要部品数 |
少ない。 |
少ない。 |
過去の記事は、「NXP「電源」まとめページ (日本語ブログ)」 からアクセスできますので、ぜひ見てみてください。
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