NXPの車載向け加速度センサ 基礎編 第二回 ~G-cell MEMS~(日本語ブログ)

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NXPの車載向け加速度センサ 基礎編 第二回 ~G-cell MEMS~(日本語ブログ)

atsuyoshiyamagu
NXP Employee
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第二回は加速度センサの心臓部である、加速度を検知する機構について取り上げたいと思います。

 

MEMS

みなさんはMEMS (Micro Electro Mechanical Systems)という言葉をご存知でしょうか?

マイクロマシンという言葉であれば、ご存知かもしれませんね。体の血管に入るほどの小さな機械といったイメージでしょうか。

MEMSはマイクロマシンを構成する要素の一つです。

簡単に言うと、半導体製造技術を応用して微小な立体構造を形成して出来たデバイスで、電子回路だけでなく、モーターなどの「動く」機械構造を作れるところが特徴です。なかなか想像しにくいかもしれませんが、この後で具体的に説明していきますね。

NXPでは、このMEMSを加速度を検知する素子として使っています。

 

MEMSの作り方

MEMSの加工にはエッチングという技術を用います。

エッチングは版画の技術から発展したものですが、半導体の回路パターン形成などに使われております。

MEMSの加工では下記の2種類の手法が主流です。

  • ウェットエッチ(酸やアルカリにより不要部分を除去)
  • ドライエッチ(プラズマやイオンビームにより不要部分を除去)

それぞれ得意・不得意な面があり、NXP製品では両方の技術が用いられています。

下記はウェットエッチの例で、緑色の犠牲層と呼ばれる部分のみに反応する薬液で溶かして除去することで、右図のMEMSバネ構造のような複雑な微小素子を形成することができます。

MEMS01.jpg

G-cell MEMS

加速度を検知するMEMSをNXPではG-cellと呼んでいます。

その心臓部分はMEMSによりコンデンサを形成したものです。

MEMS02.jpg

上図のように可動するプレート(緑色の板)と固定電極(赤、青の板)が向かい合った構造をしています。

加速度が加わると、この可動プレート(Proof Massと呼びます)が印可加速度量に応じて動きます。そうすると、コンデンサとして見なしたときの電極間距離dが変わりますので、dが変わることでコンデンサの容量Cが変わる、つまり加速度に応じてCが変わるということが分かると思います。

 

実際には下図のように可動プレートを何枚も重ねてトータルの電極面積Sを稼ぐ(=>コンデンサ容量Cを大きくする=>加速度検知感度を高める)構造になっています。  

MEMS03.jpg

この図では一方向の加速度のみ検知できますが、この構造を縦・横・上下方向にそれぞれ配置すれば、3軸加速度センサとなります。

このコンデンサの容量の変化は、後段のASICにより数値として取り出します。

Z軸G-cell MEMS

水平方向のG-cellと違い、上下方向(Z軸と呼びます)用のMEMSは特殊な構造をしています。

というのは、水平方向用のG-cellをそのまま立ててZ軸方向の検知に用いようとすると、意図しない水平方向(下の図の赤矢印のXおよびY方向)に可動プレートがずれやすいという弱点があるからです。可動プレートがずれると、コンデンサの面積Sが本来より小さくなってしまい、正確な計測ができません。

Z_MEMS01.jpg

そこで上下方向のみに動くよう、可動プレートの動きを制限する構造が必要です。

NXPは当初、下の図のように可動プレートを横からばねで吊って水平方向の余計な動きを制限し、上下方向にのみ動く構造(トランポリン型と呼んでいます)を採用しました。現在はこのコンセプトから発展したものになっています。

Z_MEMS02.jpg

 

 

以上、G-cell MEMSについて説明して参りました。

次回はG-cell MEMSのより詳細について取り上げたいと思います。

 

参考情報

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