IchigoJamはマイコンで動作するBASIC言語の動作環境.2014年のデビュー以来,子供向け学習用教材としてだけでなく,多くの応用例が稼働しています.
最初のバージョンはNXP製のDIP28パッケージのマイコン:LPC1114で動作しました.コンポジット信号出力とPS2キーボード入力を持ち,テレビとキーボードに繋げればそのまま動く画期的な環境となりました.
2024年4月にはIchigoJam10周年を記念してオープンソース化.さらに1年経過した2025年4月にはNXPの最新マイコン・シリーズ:MCXのMCX-A153に対応.このマイコンを搭載した評価基板:FRDM-MCXA153でIchigoJamが動作します (ただしベータ版なので,LPC1114版などと比べて制限がある - 2025年5月1日現在).
MCX版IchigoJamを試してみるにはNXPの開発環境MCUXpressoと,IchigoJamのソースコードが必要です.このセットアップ方法と動作の確認までの手順を解説します.
MCUXpressoは「MCUXpresso IDE (以下IDE)」と「MCUXpresso VisualStudio Code (以下VSC)」の2種類があり,IDEとVSCのどちらでも試してみることができます.
ここではIDEを使った場合で説明しましょう.
ここからは以下の各ステップでIchigoJamが動作するまでを解説します.
この記事は主にmacOSを用いた例となっていますが,Windowsでもほぼ同じ操作での作業となります.大きく異なるシリアル・ターミナルの操作部分はmacOSとWindowsのそれぞれ別の解説としました.
まずFRDM-MCXA153基板とコンピュータをUSBケーブルで接続しておきます.FRDM-MCXA153では「MCU-Link」の表示のあるUSBコネクタを使います(写真参照).
MCUXpresso IDEとFRDM-MCXA153用SDKのインストールは,ブログの別記事としてまとめてあります.インストール解説のブログでは,FRDM-MCXA153を使う場合を例としてあるため,記事の内容をそのまま実行するだけで完了します.
IDEとSDKのインストール解説はこちら↓↓
IchigoJamのコードは次のリンクのサイトで公開されています.
https://github.com/IchigoJam/ichigojam-firm
このコードをビルド(マイコンが実行できるコードに翻訳)して,マイコンに書き込むとIchigoJamをMCXマイコンで動作させることができます.このビルドや書き込みを行ってくれるのが,MCUXpresso IDE.SDKはそれに必要な情報を提供してくれるものです.
リンクをクリックし,下のようなページが表示されたら,ページ内の「<> Code」ボタンをクリックして,ポップアップ・メニューを表示.一番下の「Download ZIP」を選択.
ダウンロードが完了すると「ichigojam-firm-main.zip」という名のZIPファイル,または「ichigojam-firm-main」という名のフォルダが得られます.
次にMCUXpresso IDEを起動します.もしすでに先に他のサンプルコードを動作させてみたという場合は,新しくワークスペースを作りましょう.
初めて基板上でのコード動作を試してみる場合,ワークスペース作成の必要はありません.この場合は次節(2.2.2)から作業を行います.
ワークスペースはフォルダごとに割り当てた作業スペースです.新規フォルダを作成して,いくつかの作業場所を切り替えて使うことができます.
たとえば「MCUXpresso IDEとSDKのインポート」の記事にあったサンプル・コードを試してみたのなら,新たにワークスペースを作成してそちらで作業するのが良いでしょう.
ワークスペースの作成や切り替えは,MCUXpresso IDEの「File」メニューから「Switch Workspace」→「Other...」を選択します.下図の例ではすでにいくつかのワークスペースを作成済であったため,それらが見えています.
上記メニューを選択するとダイアログボックスが開き,どのフォルダを使うのかを聞いてきます.
フォルダの指定に,存在しないフォルダ名を入れると新規のフォルダが作られます.
ワークスペースを切り替えると,MCUXpresso IDEには再起動がかかります.
MCUXpresso IDEが起動したら,ウェルカム・タブを閉じます.
MCUXpresso IDEはデフォルト表示状態になります.
ではダウンロードしてきたコードをインポートしましょう.左下ペイン内,「Quickstart panel」内の「Import project(s) from file system...」をクリック.
インポートするコードを指定するダイアログボックスが開きます.
入力フィールドが2つ表示されていますが,これらのどちらかに入力を行います.ダウンロードしてきたコードがZIPされたままの状態の場合は上側の入力フィールドを.ZIPが解凍されてフォルダになっている場合は下側のものを使います.
ZIPファイルをインポートする場合は「Next >」ボタンを押して,インポートする中身を確認 (フォルダをインポートする場合はこのステップは省略できます).
インポートする内容は「IchigoJam_MCX」になっています.これにチェックマークがついていることを確認したら「Finish」ボタンをクリック.
このあとインポートが始まります.インポートの処理中にプロジェクト設定変更やSDKのバージョン違いについての警告が出ることがありますが,これには全て「Yes」,「Yes to all」,「OK」で対応し先へ進めます.
無事にインポートが終わると,左上ペイン内,Project Explorerタブにインポートされた「IchigoJam_MCX」プロジェクトが現れます.
MCX版IchigoJamの操作は,USBで接続したパソコン上のシリアル・ターミナルから行います.
このシリアル・ターミナルは各パソコンOSで動作するアプリケーションで,あらかじめインストールしておかなければなりません.
アプリケーションはmacOS,Windowsでそれぞれ何種類かあるのですが,ここでは使いやすいものを紹介します.
WindowsではTera Termが人気でよく使われます.ダウンロードとインストール方法はこちらが参考になります.
インストールが完了したらTera Termを起動します.起動時には接続先を聞いてくるので,下側に表示されている「Serial」にチェックを入れ,「Port:」のポップアップ・メニューから「COM◯: MCU-Link VCom Port (COM◯)」の表示のあるものを選択します.
上記の「COM◯」の「◯」部分はパソコンの状態によってそれぞれ異なる数字が入ります.「OK」ボタンを押して,このダイアログボックスを閉じます.
次に設定を行います.「Setup」メニューから「Terminal」を選択.
Terminal setupダイアログボックス内で2か所を変更.
さらにもう一度「Setup」メニューから「Serial port...」を選択
Speed:の設定を115200にして「New setting」ボタンをクリック.
Tera Termは接続された状態となりました.
macOS用にはSerialToolsを使います.このアプリケーションは少し古いものですが,AppStoreからインストールが可能で,各種設定も単一のウィンドウ内にまとめられているため,このような通信アプリが初めての人にも使いやすくなっています.
次のリンクをクリックするとAppStoreへのリンクが表示されるので,これをクリックしてインストールを開始します.
https://itunes.apple.com/us/app/serialtools/id611021963
インストールが完了したら,SerialToolsを起動します.
設定は赤い丸印の部分を確認しておきます.この中の一番左の「Serial Port」の設定は,各ユーザの基板ごとに違うものとなります.メニューから選択する際に「usbmodem」で始まる項目を選択すればOKです.
この設定のあと「Connect」ボタンを押して,接続状態にしておきましょう.
ではMCUXpresso IDEに戻ってIchigoJamを起動しましょう.
まず「IchigoJam_MCX」プロジェクトをクリックしてハイライト表示させます.
青い虫のアイコン(Debugボタン)を押す.
ターゲット基板を確認してくるので「OK」ボタンを押す.
コードがビルドされ,マイコンのフラッシュ・メモリに書き込まれます.そのあとコードが実行できる状態で一時停止.
黄色の四角とと緑の三角が組み合わさったアイコン(Resume)をクリックすると,基板上でIchigoJamのコードが実行されます.
接続しておいたシリアル・ターミナルに,IchigoJamの開始メッセージが出力されていることを確認しましょう.
macOSでの動作:
Windowsでの動作:
IchigoJamは「OK」を表示した次の行にプロンプトを出しています.
ここに
led1
を入力しパソコンのキーボどのリターン・キーを押します.
基板上の赤色LEDが点灯し,画面表示が以下のようになれば,動作確認完了です.
次のようなコードを「run」コマンドで実行すると,LEDが点滅します.
10 print "Hello, LED blinker!"
20 i=0
30 led i%2
40 i=i+1
50 wait 6
60 goto 30
IchigoJam BASIC リファレンス ver 1.4が公開されています.自分でコードを書いてみるときの参考にしましょう.
ちなみにこのブログ冒頭でも述べたとおり,MCX版はまだベータ版(2025年5月1日現在)です.このためまだサポートされてないコマンドもあります.
次にIchigoJamを動かす時にはMCUXpresso IDEを操作する必要はありません.すでにIchigoJamはマイコンに書き込まれているので,次回以降は電源を入れるだけで動作します.
シリアル・ターミナルのアプリケーションは,起動のたびに設定を変更するのは手間なので,設定を保存しておくとよいでしょう.
動作中におかしくなった時には,USBケーブルの挿し直しで電源を再投入するか,または下図のリセット・ボタンを押すことで初期状態に戻すことができます.
変更履歴:
2025-05-07:初版
2025-08-04:誤字訂正(第5節:「際投入」→「再投入」)
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