NXPのマイコン用ソフトウェア開発環境MCUXpressoは,Microsoft社が無償で配布しているソースコード・エディタ:Visual Studio Code(以下VSC)に対応.拡張機能の「MCUXpresso for VSC」をインストールし,数ステップの手順を踏むだけで,誰でも簡単にインストール可能!すぐにサンプル・コードを動かすことができます.
このブログ記事は,MCUXpresso for VSCと,各マイコン用のコードを作成するためのツール:SDKのインストール方法をステップ・バイ・ステップで紹介します.
※ この記事では使用する基板の例としてFRDM-MCXA153を使います
NXPが提供している汎用マイコンの各種サンプル・コードは,NXPが無料で提供するソフトウェア開発環境:MCUXpressoで動かせます.このMCUXpressoには以下の2種類があり, ①MCUXpresso for Visual Studio Codeは,VSCのプラグインとして提供されます.
| MCUXpressoの種類 | 以下略称名 | 提供方法 |
| ① MCUXpresso for Visual Studio Code | ①MCUXpresso-VSC | VSCのプラグイン |
| ② MCUXpresso IDE | ②MCUX-IDE | すべての機能をひとつにまとめたアプリケーション |
このブログでは,①MCUXpresso-VSCとSDKのインストールの方法を紹介します. MCUXpresso-VSCはWindows,macOS,Linuxで動作し,いずれのOSでも同じユーザ・インターフェースでの操作が可能です.
MCUXpresso-VSCでサンプル・コードを動作させるには,まず準備としてVSC,MCUXpresso-VSC(プラグイン),ツールチェーン(マイコンで動作するコードを生成)をインストールします. その上に,動作させるマイコン/基板に合わせた*SDKをインポートします.
*SDKはSoftware Development Kitの略で,マイコン毎に必要なドライバ・コード,設定情報が含まれます.
SDKは作成しようとするマイコンや基板(ターゲット)ごとにインストールしておかなければなりません.
ちなみに②MCUX-IDEでもMCUXpresso-VSCと同等の作業が可能です.MCUX-*IDEにはソースコードを編集するエディタをはじめ,コンパイラやリンカといったツールチェーン,コードをプロジェクト単位にまとめて,さまざまな設定と一緒に管理してくれるソフトウェアなどが含まれています.
MCUXpresso-VSCと比較すると開発に必要な全てがひとつにまとまっているため,インストールから開発作業までの流れをスムーズに進めることができます.一方,MCUXpresso-VSCはMCUX-IDEに比べて必要なツールを拡張機能(プラグイン)として追加していく構造になっており,必要となるさまざまな機能をカスタマイズできます.ご自身が使いやすい・開発しやすい環境を選択いただければと思います.
*IDEはIntegrated Development Environmentの略で,統合開発環境アプリケーションです.
それでは,MCUXpresso-VSCとSDKのインストール方法をステップごとに解説しましょう.
この記事はmacOSを用いた例となっていますが,WindowsやLinuxでもほぼ同じ操作でインストールできます.
macOSでは,MCUXpresso-VSCに必要なツール(コンパイラやリンカ:マイコン用のコードを作成するソフトウェア)や,さらにそれをインストールしたり動かしたりするソフトウェア群を管理するものとして,Homebrewを使うようになっています.Homebrewは「パッケージ・マネージャ」と呼ばれるソフトウェアで,これを先に入れておかなければなりません.
Homebrewのサイトに行くと,インストールのためのコマンドが掲出されています.これをMac上の「アプリケーション > ユーティリティ > ターミナル」を起動してその中にコピペして実行します.
Homebrewサイト
Homebrewインストール・コマンド (上記サイトから)
/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"
Mac上のターミナル・アプリケーション
ターミナル内にペーストしたコマンド
コマンドが終了したら,画面に表示された手順に従って次のコマンドを実行 (最初のコマンド実行後の画面表示から).画面内からコピペして実行するので構いません.
echo >> /Users/demo/.zprofile
echo 'eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"' >> /Users/demo/.zprofile
eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)
さらにインストールができたことを確認するために「brew help」コマンドを入力し,下のような表示が出れば完了です.
表示を確認したら,ターミナルを終了して構いません.
macOSだけの下準備はここまで.
Visual Studio Code (VSC)は各種OS用のアプリケーションとして配布されています.まず,この配布ページへ行って,自分OSに合わせたアプリケーションをダウンロード&インストールしましょう.
インストールが終わったら,VSCを起動します.
この記事では画面例を見やすくするため,テーマを白地に変更しました.
次に拡張機能(プラグイン)のMCUXpresso for VSCをインストールします.VSC内左のアクティビティ・バーで「拡張機能」アイコンをクリックして検索,出てきたMCUXpresso for VSCのインストールボタンを押せばすぐに完了します.
インストール時に「westが見つからない」というエラーが出ますが,これはこのあとすぐインストールするので無視して構いません.
次はMCUXpresso for VSCの中からツールチェーンのインストーラをダウンロードします.
ダウンロードが終わると,インストーラは自動的に起動します.インストーラはまず,バージョンの確認と,操作性改善のためのデータ送信の許可を求めてくるので,それぞれのボタンを押します.その後,インストールする項目を選択する画面が現れます.
FRDM-MCX基板を使う場合,選択項目は「MCUXpresso SDK Developper」と「LinkServer」だけで構いません.クリックすると,各項目の左端に青い帯が現れます.これらを確認したのち「Install」ボタンを押します.
インストールにはしばらく時間がかかります.この記事を書くために再インストールを行なっていますが,この記事を書くにあたって下のような進捗20%の画面で4分停止していました 🤨
追記(2026-07-24): 進捗状況がウインドウ内下部のテキストメッセージで表示されるように改善されています
これにかかる時間はネットの混み具合などによって多少長くなります.気長に待つ必要があります.ですがあまりに長いようであれば,いったんキャンセル・ボタンを押して再試行してみてください.
インストールが完了すると次のような画面が現れ,VSCの再起動を促されます.*これは忘れないように行いましょう!
(前の節にも書きましたが)ツールチェーンのインストールが終わったら,いったんVSCを終了して起動し直します.
次はSDKのインポートです.今回の例ではNXPのサーバに置いてある,各種の基板用のSDK配布場所からインポートしてみます (このほかNXPのweb上にあるSDKビルダを使ってカスタムしたSDKをインポートしてくることも可能ですが,今回は一番単純な例で解説します).
まず,VSC内のアクティビティ・バー(一番左端)内のMCUXpresso-VSC拡張機能アイコンがクリックされた状態にしておいて,「Import Repository」ボタンをクリック.その右側に開いたタブ内で「REMOTE ARCHIVE」を選択
タブ内上部にある「Package」欄で,いまから使う基板を検索.この中で「153」と打つとFRDM-MCXA153が表示されるのでこれを選択.
そうすると同一画面内にさらに入力項目が表示されます.
「Location」フィールドでSDKのインストール先フォルダを指定します.特に決まったところはなく,好きなところを指定できますが,ファイルの書き込みができるフォルダで,パスに日本語などのマルチバイト文字を含まない方が安全です.
「Create Git Repository」のチェックは任意ですが,特に必要がなければチェックを外します.これによってPC上のディスクの節約ができます.さらに「I agree」のチェックを入れますが,その前にその上にリンクのあるSDKのライセンスに目を通しておくようにしましょう.
ここまでくれば,あとは「Import」ボタンを押すだけです.
これで準備は整いました!
左上のQUICKSTART PANEL内のコマンドを使って,新しいプロジェクトを作成したり,SDKやGitHubまたはダウンロードしてきたプロジェクトをインポートして実行してみることが可能です.
SDKにはサンプル・コードが含まれています.
ここまでFRDM-MCXA153を例としてSDKをインストールしたので,そのままこの中にあるサンプル・コードを試してみることにします.
まず基板とコンピュータをUSBケーブルで接続しておきます.FRDM-MCXA153では「MCU-Link」の表示のあるUSBコネクタを使います(写真参照).
ではサンプルコードをインポートします.
MCUXpresso-VSCのパネル内で「Import Example from Repository」ボタンを押します.
右側に表示されたタブ内で
します.このサンプルコードはマイコンのピン入出力動作を確認するもので,基板上のボタンが押されるとそれを認識してLEDを点灯/消灯させます.
テンプレートを選択したら,続いてサンプルコードのインポート先を「Location:」で指定.このフォルダも任意です.
その下はツールチェーンの選択です.もしこのようなツールのインストールが初めてなら,選択肢は1 つだけです.
最後に「Import」ボタンを押します.
インポートが完了すると,PROJECTS欄に先ほどとテンプレートと同名のプロジェクトが表示されます.
インポート時に「再構成」を勧められることがあります.これはコードをビルド(コンパイルやリンクなど)するための構成設定が複数あったため.この場合は無視しても構いませんが,「いますぐ構成」ボタンを押した場合には,そのいずれか(どちらでもよい)を選択しておきます.
インポートしたプロジェクトの上にカーソル・ポインタを合わせると,ボタンアイコンが現れます.この中の緑色の右向き三角ボタン(デバッグ・ボタン)を押すと,デバッグ・セッションを開始します.
コードのビルド(コンパイル,リンク),マイコンへの書き込みが完了すると,デバッグ・インターフェースが表示され,プログラムの実行が可能になります.
デバッグ・インターフェース表示状態で,その上部に並んだアイコン・ボタンのうち,「|▷」の表示のボタンを押すとマイコンの動作が始まります.
この状態で基板のSW2ボタンを押すたびにLEDの点灯/消灯が繰り返されます.
もし,基板が接続されていなかった場合には,次のような画面が現れます.接続を確認して再度試してください.
このLED点灯/消灯プログラムは,シリアルに出力が出ています.
VSC内のシリアル・モニタを使えば,その様子を見ることもできます.
表示幅が狭い場合には「SERIAL MONITOR」表示は折りたたまれています.「PROBREMS OUTPUT DEBUG CONSOLE ...」などの並びの「・・・」をクリックすると出てきます.
下図は「Start Monitoring」ボタンを押して,さらに基板上のSW2を押したあとの様子.
プログラムはデバッグ画面上の「□」ボタンを押すと停止します.
変更履歴:
2025-11-13:初版
2025-11-14:インストール手順解説動画へのリンクを追加 / 参考資料の項を追加
2026-07-24:章番号と目次を追加.「0. この記事は?」内,動画紹介を枠で囲み.「2. 下準備:macOSの場合」冒頭の案内を枠で囲み,「Visual Studio Codeのインストール」へのアンカーリンクを追加.「5. ツールチェーンのインストール」内,進捗表示による改善を追記
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お手数をおかけしますが,お問い合わせの際には「NXPへの技術質問 - 問い合わせ方法 (日本語ブログ)」をご参照ください.
(既に弊社NXP代理店,もしくはNXPとお付き合いのある方は,直接担当者へご質問いただいてもかまいません.)
NXPのマイコン:MCXシリーズのソフトウェア開発にはMCUXpresso for VSC (Visual Studio Code)が無料で使えます.
またさまざまなMCUXpresso for Visual Studio Codeで使えるサンプル・コードも提供されており,動作検証だけでなく,さまざまなプロジェクトのベースにも使えます.
この記事を読めば,誰でも簡単にVSC開発環境&SDKをインストールできて,サンプル・コードまで動かすことができます!